スタッフブログ

2023.04.10

予防について詳しくなろう!

先日、予防薬セミナーが開催されました!(先日といってだいぶ経過してしまいました・・・)

毎年使っている予防薬ですが、さまざまな寄生虫をどのようにして予防しているのでしょうか?

もしかしたら普段の診察だけでは十分なご理解まで進んでいないかもしれません。

そこで今回はネクスガードシリーズのTV CMでお馴染みの日本全薬工業株式会社様とベーリンガーインゲルハイム様にお願いし、1時間ほどのセミナーを行なっていただきました。

新型コロナウイルスの感染防止も徐々に緩和されている中ですので(当院では院内において今のところ不織布マスクのご着用継続をお願いしております。ご協力をお願いいたします。)、セミナーの参加特典に加え、おやつとして、お茶やお菓子(カズノリイケダのクッキー)のご提供も行われました。

今回のセミナーで取り上げた寄生虫は、フィラリア・ノミ・マダニという、わんちゃん猫ちゃんがメインで予防している3つのものについて。

“フィラリア”犬糸状虫という名前ですが、犬はもちろんのこと、実は猫ちゃんにも感染する寄生虫なのです。

とはいえ、今では飼育されている猫ちゃんのほとんどが室内飼い・・。「お外に出ないから、予防の必要なんて無いんじゃないの??」と思われがちですが、

野良猫ちゃん完全室内飼いの猫ちゃんを対象とした研究によりますと、双方のフィラリア感染率に差は見られなかったということです。

それでも、なぜわんちゃんより猫ちゃんのフィラリア症について馴染みが少ないかというと、猫ちゃんの場合、フィラリアに感染しても生体反応としてフィラリアをやっつけてしまうため、検査上なかなか検出しにくいのです。

 

ここで、

「ーーーーーちょっと待って。生体反応でフィラリアをやっつけられるなら、薬の投与なんて要らなくない??」と思われた方がいるかもしれません。

実はこの点がポイント。

原理はアレルギー反応と似ているのですが、

いくら体内に入ってきた抗原(アレルギーの素)を自分でやっつけられたとしても、それが徐々に体の負担として蓄積し、いずれ大きなアナフィラキシー反応として重篤な状態に陥ってしまうのです。

このため、猫ちゃんの場合も、アハフィラキシー反応が出ないように投薬により予め虫の感染を防いであげる必要があるのです。

馴染みはないけれど、実はとっても大切な猫ちゃんのフィラリア予防。ぜひ猫ちゃんを飼われている飼い主さまには覚えていてほしいと思います。

 

わんちゃんを飼われている方には、すでにご存知の方も多いかと思いますが、

改めて、このお薬はフィラリアという虫を駆虫することでフィラリア症という病気を予防する薬であって、蚊に吸血される時に入ってくるフィラリアという寄生虫の“感染”を予防するものではないということを再度ご認識いただければと思います。

駆虫薬の作用機序としては、蚊の吸血により注入されたミクロフィラリアが成長する過程で駆虫してくれるというお薬なので、

わかりやすくいうと、こちらはフィラリアに対しては駆虫薬なのです。

感染していた虫をまとめて駆虫するお薬となるため、「寒くなってきて、蚊も見られないからお薬はもういらないでしょ。」ということになると、過去1ヶ月以内の間に感染していた虫を落としきれず、フィラリア症になってしまうため、せっかく7ヶ月ほど投薬していた努力が最後の1回を投薬しなかったために無駄になってしまいます。(地域・気温の推移によって予防期間は異なりますので、7ヶ月はあくまで当院の1例となります)

処方されたお薬は、飲み残し、飲み忘れのないよう、指定された期間しっかり与えて下さいね!

 

 

そして今回のセミナーでとても興味深かったお話が、ノミの実験のお話。

犬1頭にノミを100匹感染させる実験を行った後、1時間後に一体何匹のノミを発見することができるか。という実験のお話です。

結果、発見できたのはたったの5匹。  繰り返しますが、100匹中、たったの5匹・・・・・です・・・

つまり、飼い主さんが「ノミを1匹見つけた!」という時点で、すでに犬の体にはノミの成虫が20匹も潜んでいるというわけなのです。。。

想像しただけでゾワっとするお話ですよね。しかも、ノミのライフサイクルはたったの14日。2週間ほどで卵を産んで幼虫から蛹になり成虫へと成長するため、1匹成虫を発見した時点でノミファミリーはその何十倍もお家の中(カーペットなど)やわんちゃんの体に潜んでいることになります。(ノミの成虫1匹に対して、蛹はその2倍、幼虫はその7倍、卵はその10倍の換算です。)

ノミは感染してから1〜2日ほどで産卵をスタートするので、いかに予めの、が大切かということがよくわかりました。

 

 

そして最後は近年大変問題視されているマダニによる感染症

ダニを媒介として感染する病気には、バベシア症、ライム病、日本紅斑熱をはじめ、SFTS重症熱性血小板減少症)という、血を止める働きをもつ“血小板”が減ってしまう病気があります。(症状としては他にもさまざまあります)

このSFTSが最近とても多く、しかも致死率10〜30%と大変危険な感染症として注意が必要です。

マダニから直接感染することもあれば、わんちゃん・猫ちゃんを介して感染する危険性も高いため、飼い主さん自身も草むらに入る際にはマダニに噛まれないような服装でいることが大切であり、わんちゃん猫ちゃんも毎月の予防をしっかり行うことが大切になります。

 

キャンプドックランに行く方はもちろん、普段のお散歩コースがコンクリート上という方でも、ワンちゃんは脇道の臭いを嗅ぐため、頭から草むらに突っ込んでいく仕草によりマダニをつけてしまうことはとても多いです。

昨年もお散歩に出かけただけでダニをつけていらっしゃるわんちゃんが多数いらっしゃいました。

院内で捕獲されたダニをジップロックに入れておいたところ、程なくして無数の卵を産んだマダニもいて、スタッフは震え上がりました。もう魚卵が食べられなくなるくらいなビジュアルでした・・・😭

 

お薬の投与を行うと、効果は約1ヶ月ほど持続しますが(ノミマダニの薬効としては、フィラリアと違い予防薬という認識でOKです)、決してマダニを寄せ付けない薬ではないため、マダニが体表に乗ってしまうことはあります。

マダニが吸血を開始して動物の体内の薬の成分を取り込むことによりマダニを殺す。という機序になりますので、もし万が一体にマダニの姿を見つけても、投薬済みの方であればは慌てる必要はありません!

数時間以内に死んでポロッと死んで落下していきます。

ダニは目の縁やお顔・お耳・足の指の間など皮膚の薄い・柔らかいところを狙って噛み付いてくることが多いですが、お腹や背中にももちろん寄生します。物理的対策としてはお洋服を着せてあげたり、お散歩の帰りの入念なブラッシング等で対策してあげて下さい。

 

そして万が一投薬されていない方でマダニに噛まれてしまった際は、決してご自身で無理に取ろうとしないでください。

マダニの顎はノコギリのような形状になっており、噛み付いた際に分泌するセメント様物質で口をガッチリと固定され、抜こうと思っても抜けないような状態になっています。

圧をかけたり、力を加えて引っ張ってしまうと、マダニのもつ細菌やウイルスを動物に噴射してしまうことになりますし、マダニの口だけ残して傷口が化膿してしまうことになりますため、

繰り返しになりますが、マダニを見つけた場合には決して無理に取ろうとせず、動物病院へご相談ください。そして何より、予防が大切です・・・・・

動物を介するSFTS感染で多い例が、弱っていた野良猫ちゃんを捕獲して感染/弱っていた猫ちゃんを動物病院に連れて行って動物病院のスタッフが感染という例です。

予防状況の不明なお外の猫ちゃんで弱っている子を発見した際は、ゴム手袋等を装着し、感染対策もしっかりした上で保護してあげてると良いと思います。また、動物病院へ来院される際も、危険性を考慮して病院側にその旨(保護した状況)をお伝えしておくと良いですね。

 

と、ここまで色々な情報を一気に書き込んでしまいましたが、総括すると、

ワンちゃんも猫ちゃんも、

◎ノミ・マダニ・フィラリアのうち、どれも一度感染すると後々大変なので、予防がとても大切であること!

◎フィラリアは駆虫薬、ノミダニは予防薬という認識で!

◎与えられた期間、正しく投薬してあげることが大切!

ということです。

 

予防期間は、冬に差し掛かる前までとなりますので、ご家族全員で今一度病気に対する理解を深めて正しく予防をしてあげて下さいね♪

 

〜ちなみに・・セミナー最後に確認された大切なお話〜

フィラリア予防薬は、要指示薬となっております。(要指示医薬品は、副作用が強いもの、あるいは病原菌に対して耐性を生じやすいもの等、その使用期問中獣医師の特別の指導を必要とするものが指定されているお薬です。)

一部ネット販売などで見かけるお薬は、輸入によるものですと製品名が同じでも、“日本国内で認可されていない成分”が含まれている可能性があり、万が一その服用により中毒症状を起こしても成分が不明なため、病態把握や中毒成分を追えず対処できない可能性がございます。

農水省のHPでも注意喚起されているように、動物病院外で横行しているお薬には実態が不明なお薬がございますため、飼い主の皆様は十分お気をつけ下さい。

 

【おまけ】

お茶菓子のほか、セミナーでご用意いたしました特典たち。